新規ビジネスが成功するかどうか?はポジショニング戦略次第と言えるほど、ポジショニングって重要なビジネス要素です。
もしあなたが、
・新規ビジネスを立ち上げようと考えている
・既存のビジネスがうまくいっていない
・ライバルと差別化を図りたい
と考えているなら、ポジショニングを見直し、それを市場に定着させるポジショニング戦略を取り入れることをオススメします。
ポジショニング戦略とは?不戦勝で売上UP!?
ポジショニング戦略とは、顧客の頭の中に自社製品が優位になる立ち位置(ポジション)を築くためのマーケティング戦略です。
「自社製品が優位になる立ち位置」を言い換えるなら、お客さんの頭の中で「〇〇ならあなた(の製品)」と思われる状態を作ることです。
そのために、
自社の強みを活かせるような自社製品の立ち位置(ポジション)を決め、そのポジションを自社が押さえたことを拡散し、見込み客を集めたり自社商品の強みをPRなどを戦略的に行いうことで、見込み客に認知させる
のが、ポジショニング戦略です。
ポジショニングの定義
マーケティング業界に一大革命をもたらし、世界中で30年以上も読み継がれたマーケターのバイブル、「ポジショニング戦略[新版]/アル・ライズ氏、ジャック・トラウト氏(海と月社)」では、ポジショニングを次のように定義しています。
ポジショニングとは、「情報があふれかえる現代社会で、人々にメッセージを届ける」という難題を解決する、最も有効な考え方である。
ビジネスにおけるポジショニングは、商品から始まる。商品とは、製品、サービス、企業、組織、あるいは一人の人間である。あなた自身の場合もある。
といっても、ポジショニングは、商品そのものに手を加えるわけではない。消費者の頭の中に、商品を位置付ける(ポジショニング)のだ。名前や価格、パッケージを変えることはあるが、商品そのものには手を加えない。
引用:『ポジショニング戦略[新版]』 アル・ライズ/ジャック・トラウト(海と月社)」
ちょっとわかりにくいかも知れませんが、例えば、既にある製品はそのままでも、イメージを変えることで、お客さんが欲しいと思ってしまう製品に”変える”のがポジショニング戦略です。(私なりの解釈ですが…)
ポジショニング戦略の目的
ポジショニング戦略の目的は、競合他社と比較されずに自社製品を選んでもらうこと(売上UP)であり、それと同時に、自社商品を優先的に選んでくれるファン客の獲得です。
ポジショニングを明確化したことで、売上が8倍に伸びたシーブリーズや、強力なライバルとは戦わないポジションを確立したポカリスエットなど、ポジショニング戦略に成功したケースでは、売上アップとファン客の獲得がセットになっています。
ファン客の獲得は、新製品や別の製品の売上にも影響するので、かなり大きなビジネス資産になります。
ポジショニングと差別化の違い
ポジショニングと差別化は、”ライバルとの違いを作る”という意味では同じなのですが、その目的は別物です。
目的が違う2つの戦略
■ポジショニング戦略・・・市場での立ち位置を決め、ライバルと比較されずに選んでもらうための戦略
■差別化戦略・・・自社製品に競合製品にない付加価値をつけることで、ライバルと比較された時に選んでもらうための戦略
つまり、差別化戦略は、比較されたときに勝つための戦略で、ポジショニング戦略は、比較されずに勝つ戦略ということです。
そう考えると、ポジショニングと差別化は、全くの別物だとわかると思います。
ポジショニング戦略で立ち位置を確立し、さらに競合製品と比較されても差別化ポイントで勝っている製品であれば、最強ですよね
ポジショニング戦略の成功事例
ポジショニングの有名な成功事例はたくさんありますが、今回はポカリスエットとシーブリーズの2商品について紹介します。
どちらの商品も最初に押さえていたポジションから、違うポジションへとポジショニングを変えたことで、成功している例です。
ちなみに、ポジショニングを変えることを、リ・ポジショニングと言います。(そのまんまですね)
ポカリスエットのリ・ポジショニング戦略:コンセプトを変える
販売当初のポカリスエットは、スポーツ飲料としてのポジションを獲得していましたが、やがてその市場には、アクエリアスやゲータレードというような競合が次々と参入してきたため、スポーツ飲料市場は、飽和状態となっていました。
ポカリスエットの販売元は大塚製薬という、もともと”お薬”という健康をサポートする商品を製造している会社です。大塚製薬はその自社が持つ強みを活かし、「イオン飲料」「水分補給」という新しいコンセプトを打ち出し、「健康的な清涼飲料」という、ライバル不在のポジションを作り独占しました。(現在はライバルが多いです。)
ちなみに、その後のスポーツ飲料市場ですが、アクエリアスはオリンピック公式飲料としてトップの地位を確立していますし、ゲータレードは残念ながら日本市場を撤退しています。
いち早く飽和状態にある市場に見切りをつけ、新たなポジショニングを探し出したポカリスエットのマーケティング戦略は大成功だったと言えますね。
なお、現在のポカリスエットは、中高生向けの「青春の味」という新たなポジションを作り、中高生から中高齢の大人まで幅広い消費者の支持を得ています。
このように、一つの成功に止まらずに、常に次の道を探し続けることが、市場競争で生き残る秘訣なのかもしれませんね。
シーブリーズのリ・ポジショニング戦略:ターゲットを変える
ボディケア製品であるシーブリーズといえば、中高生など若い人向けの汗のケアをする商品というイメージがありますよね?
じつは私も、学生時代にお世話になっていました。
ですが、以前は違うポジションを押さえていたのをご存じですか?
そのポジションというのは、マリンスポーツなどによる日焼け後の肌のケアをする商品というポジションです。
商品名を直訳すると、“海風”となっていることからも、もともとはそういう商品だったんだな〜とわかりますよね?
そんなシーブリーズですが、時代の変化に伴い、若者の海離れ&日焼けを嫌がる人が増えたことで、売上が低迷していきました。
そこで、シーブリーズはターゲットを女子高生などの若者へと変更し、それに伴い商品の立ち位置も、日焼けのケア商品から、汗のケア商品へと訴求方法を変更しました。
それに伴い、”海”や”日焼けした肌のケア”という非日常的に使うものから、”汗対策”という日常的に使うものへとポジションが変わったことで、一年を通して利用される製品に変わり、売上の低迷から脱することに成功しています。
ポジショニング戦略の手順・決め方
そんな売上に影響するポジショニングを、どうやって決めるのか?
それは、現状把握⇒ポジショニングマップ作り⇒ポジショニングの決定という流れが一般的です。
リ・ポジショニングのための現状把握
ポジショニングは、ライバルに比較されずに自社製品を選んでもらう自社の立ち位置を決めることです。
ですから、その立ち位置を決めるためにも、現在の自社製品の立ち位置を把握することで、次に狙うポジションを考えやすくなります。
ちなみに、新規事業や新製品の場合は、現状把握として、新事業(新製品)の強みやターゲットなどを明確化し、次のポジショニングマップ作りの材料となる情報を整理しましょう。
ポジショニングマップを作る
ポジショニングマップとは、ある2つの比較要素を縦軸と横軸で十字に交差させてできる4つのエリアに、自社製品と他社製品を配置することで、それぞれのポジションを確認できるマップです。
一目で自社製品と他社製品の位置付けが俯瞰できるので、狙うべきポジションがどこなのかもすぐにわかります。
注意点としては、空いているポジションであれば、どこでもいいというわけではないということです。
ポジショニングマップの軸
どういうことかというと、ポジショニングマップは、どの要素を軸として設定するかによって、作られるポジションが変わるため、ライバル不在のポジションがあったとしても、売上や顧客の獲得につながるとは限らないからです。
例えば、下の図のようにデザイン軸と価格軸でポジショニングマップを作った場合、デザインがダサくて、高価格というポジションが空いていますけど、そこのポジションを押さえたところで、売上が増えそうにないですし、顧客を獲得できそうもないとイメージできますよね?
つまり、そういうポジションを選んではダメってことになります。
ですから、ポジショニングマップを作成する場合、そういうダメなポジションが作られない軸を設定する必要があります。
では、ポジショニングマップの軸はどう選んだら良いのか?というと、方法はいろいろありますが、KFB要素を意識した軸を設定することをオススメします。
KBF要素とは?:ポジショニングマップの軸
KBFとはKey Buying Factorの略で、重要購買決定要因のことで、お客さんが、自社製品を購入する際に重視する要因のことです。
例えば掃除機を購入する場合、ブランド、デザイン、吸引力、省エネ性能、価格、サイズ、割引額など、さまざまな情報を比較して選ぶと思いますが、その中で、購入する決め手となる要因がKBFです。
例えば有名ブランドの掃除機にしたい人はブランドがKBFであり、とにかく安さを求める人は価格がKBFになります。
その自社製品を購入する決め手となる要因(KBF)をポジショニングマップの軸に設定することで、自社製品が比較されずに選ばれるポジションを見つけやすくなるとともに、そのポジションであれば売上や顧客の獲得に繋がると考えられます。
ですから、ポジショニングマップの軸を考える際には、あなたの取り扱い製品のKBF要素を洗い出すことから始めましょう。
具体的な施作に落とし込む
ポジショニングマップを作成して狙うべきポジションが明確化したら、それをお客さんに認知させるための具体的な計画を立て、戦略的に行動することが重要です。
行き当たりばったりだと、計画倒れになったり、途中で方向性が変わってしまうこともあるので、なるべく具体的な行動計画にまで落とし込むようにしましょう。
ポジショニング戦略成功のポイント
ポジショニング戦略を成功させるためのポイントを、ポジショニングステートメントとWEBで拡散するという2つ紹介します。
ポジショニングステートメント
ポジショニングステートメントとは、自社製品の立ち位置を明確に示すためのメッセージです。
ポジショニングマップを見れば、他とは違う立ち位置であることは見てわかりますが、そのポジションから受け取るメッセージって人によって変わってしまうこともあります。
ですから、誤解されないように、そして、正しく自社の立ち位置を認識してもらうために、わかりやすく言語化したものがポジショニングステートメントがあると便利なのです。
ポジショニングステートメントを作ったら、それに関する情報をどんどん発信し、ポジショニングの定着化を図りましょう。
WEBで拡散する
ポジショニング戦略を成功させるには、とにかく、お客さんに認識してもらうことが必要不可欠です。
そのためにもっとも効率的なのは”広告を出すこと”ですが、残念ながらそれは資金に余裕のある企業の戦略です。
では資金に余裕がない場合はどうしたら良いのか?というと、WEBを活用してポジショニングステートメントに関する情報をどんどん発信することです。
ホームページ、ブログ、SNSなどさまざまなWEB媒体を活用して、情報を拡散することで、一人でも多くの方に、自社製品の存在を知ってもらいましょう。
例えば、ある程度人員を割けるのであれば、Twitter、Facebook、Instagram、TikTokなどの各媒体に担当者をつけて情報発信することをオススメします。
人員を割けないのであれば、利用する媒体を絞り込んで、まずは集中的にその媒体で情報発信を行い、ある程度フォロワーが増えたり、作業効率が良くなってきたら、別媒体に横展開していくことをオススメします。
まとめ
ポジショニング戦略とは、お客さんの頭の中に「〇〇なら自社製品」と認識してもらうことで、競合製品と比較されずに選ばれるための戦略です。
そのためには、狙うべきポジショニングを見つける方法と、ポジショニング戦略で成功するためのポイント2つについて紹介しました。
売上アップ&顧客獲得をどうにかしたいと考えているなら、是非、ポジショニング戦略を導入してください。